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    Fire from heaven 第7章(9)

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      Fire from Heaven
      Fire from Heaven
      Mary Renault
      JUGEMテーマ:読書


      P283まで読みました。この段落も短くて会話が多いので比較的
      楽に読めましたがショッキングな描写も多く印象に残りました。

      戦いが終わり、勝利をつかんだマケドニア軍の天幕ではドンちゃん
      騒ぎが行われています。ワインで喉を潤したあとは立ち上がって肩
      を組み、体を揺らして大声で歌います。片目が見えずこの時は足も
      悪くしていたフィリッポス王はワインで酔ってフラフラしていますが
      パルメニオン将軍が隣でしっかり支えてくれ、王は機嫌よく宿敵デモ
      ステネスの悪口を歌って盛り上げます。

      フィリッポスとパルメニオン、この2人はこうした宴会では必ずそば
      にいて、王と将軍と言う関係以上に深い信頼と友情の絆があったのだ
      と思われます。パルメニオンの方がかなり年上ですが2人の息子アレ
      キサンダーとフィロタスも同年代、きっと自分達と同じように息子達
      も固い絆で結ばれると信じていたでしょう。その後に起きた悲劇を知
      っていると、何気ないこうした場面でも胸が痛みます。

      こうしたドンちゃん騒ぎから離れて、アレキサンダーとヘファイスティ
      オンはテーバイ人の激しい戦いがあった川の方へと向かいます。月明
      かりの下にはたくさんの死体がありました。ある男は仲間に水を飲ませ
      ようと兜をさかさまにして川の水を汲み、這って進む途中で息絶えて
      いました。アレキサンダーはその兜をそっと持ち上げて歩き、口を開け
      乾いた舌を見せて死んでいる男の口に水を注ぎます。映画でも傷ついた
      若者が安楽死させられるのを見てむせび泣いている場面がありました
      が、アレキサンダーはこうした感受性も人一倍強く、戦いで英雄気分に
      なりながらも深く傷ついていたのかもしれないと思いました。

      他には顔の半分が剥ぎ取られて頭蓋骨が剥き出しになっている死体も
      ありました。たとえ小説であれこうしたリアルな描写があると戦いで
      どういう殺され方をするかがよくわかり背筋がゾッとします。できる
      だけ多くの相手を短時間で殺さなければならない切羽詰まった状況、
      ただもうすばやく槍や剣を動かして相手を倒さなければならない時に
      どこを切ったら痛いなどと考える余裕はなく、場合によっては本当に
      悲惨なことになりそうです。そうした地獄絵のような場面が終わって
      静かになった川辺、最後まで仲間のことを守ろうとして死んでいった
      テーバイ人にアレキサンダーは敬意も感じ、ドンちゃん騒ぎの列に
      加わるよりもその場所にヘファイスティオンと一緒にいることを選び
      ます。

      何人の敵とどこで戦ったという記録だけでなく、敵をどのように殺し
      てそれをどう感じたかまで書く、ここに記録と小説の大きな違いがある
      と思いました。感じたこと、話したことなどは事実とは違うフィクショ
      ンですけど、そうしたフィクションや感情の細かい流れを言葉にするこ
      とで事実以上に事実に迫ったその人物が見えてくる、それが小説を読む
      醍醐味でしょう。この小説はさらに死んでいく戦士の苦痛や渇きなども
      それが自分でも感じられるほどリアルで、言葉だけでここまで伝える
      ことができるのかと驚きました。

      激しい感情の渦に巻き込まれているアレキサンダーに比べて、ヘファイス
      ティオンはどうも無邪気と言うかどっかズレています。でもこういう無
      頓着な人間だからこそ、激しすぎるアレキサンダーの側であんまり自分
      を傷つけずに生きていかれたのかもしれません。

      ステラ * 洋書 * 15:50 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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